ソフトバンク、ツーカー買収?

tuka.jpg日本経済新聞が、「ソフトバンク、ツーカー3社の買収に名乗り」の報道をしたようです。この微妙な時期の買収報道は、今の新規参入の議論と別ではないでしょう。
新規参入についてのお話は、別の機会に書くとして、今回は、ツーカーを仮に買収したときにメリットがあるかどうか、まとめてみたいと思います。


まず、以下のように報道されています。
ITmediaの記事においては、

 日本経済新聞は1月15日付けで、携帯電話事業への参入を目指すソフトバンクが、KDDI子会社・ツーカー3社の買収に名乗りを上げたと報じた。
 報道によると、ソフトバンクはKDDIに2000億円強の買収額を提示したようだという。
 ツーカーグループはツーカーセルラー東京、ツーカーセルラー東海、ツーカーホン関西の3社。昨年12月末時点の合計加入者は359万9600件でシェア4.2%。

日経BPの記事においては、

1月15日,日本経済新聞などで報じられた「ソフトバンクがKDDI傘下の携帯電話事業者ツーカー・グループ3社の買収を2000億円で打診」との報道に対し,ソフトバンク広報室は「そのような事実はない」と完全否定した。一方,売却する側のKDDI広報部は「ノーコメント」として否定も肯定もしない。

インプレスケータイWatchの記事によると

今回、「ソフトバンク側がツーカーグループの買収を打診した」との一部報道を受け、ソフトバンクは「そのような事実はない」と否定。KDDIは「ノーコメント」としている。また当事者であるツーカーセルラー東京では「コメントできる立場にない」としている。

夕刊フジの記事では、

KDDIは、業績が好調な「au」ブランドの携帯電話事業も手掛け、重複解消のため、今年3月にツーカー3社を完全子会社化。他社への売却か、「au」事業への吸収を検討する。

ここでも書かれていますが、ツーカーグループは、ツーカーセルラー東京ツーカーセルラー東海ツーカーホン関西の3社で成り立っています。元々は日産自動車が、中心となって、1994年に設立した会社です。日産自動車の経営状態の悪化に伴い、株式を第ニ電電株式会社(現KDDI)に売却。現在の筆頭株主は、KDDIです。2005年3月には、KDDIの完全子会社となります。
その他の地域については、デジタルホン(現ボーダフォン)と、各地域にデジタルツーカーを設立して、全国展開を図っていきました。
KDDIは、元々は、特殊会社として設立された KDD、トヨタ自動車が設立した IDO、京セラ系の第二電電、セルラー電話グループが合併して出来た会社であり、現在の資本割合もその流れを組んでいます。また、KDDそのものについては、その昔、日本高速通信(日本道路公団系)も吸収合併しています。

今の1.5GHz帯の状況(携帯電話用周波数の利用拡大に関する検討会資料より引用)
これを見て分かるとおり、ツーカーグループは、携帯用の周波数として、1.5GHz帯について10MHzx2の割り当てを受けており、ボーダフォンのPDCサービスの周波数の割り当ての真下に位置しています。他の地域との割り当てを比較すると、昔のデジタルツーカーを共同設立したときの名残があります。
さて、仮にソフトバンクがこの会社を譲り受けたとしたら、考えられるメリットとしては、現在の加入者が得られるということ、1.5GHzの東名阪の免許が得られるということ、現在の1.5GHzの基地局設備が得られること、KDDI にしてみると、今のツーカーユーザーを将来的には、auブランドサービスに移行させていかないと、コスト負担が重くなっていく可能性はあります。売却して資金を得るほうがメリットがあるかもしれません。ですが、KDDIにしてみると、売却して商売敵が増えてしまうというデメリットはあるでしょう。
1.5GHz帯も800MHz帯同様に周波数再編の対象となっています。また、ドコモもシティホンサービスとして、5.5MHz幅x2の割り当てがあるものの、サービス自体は終了しており、デュアルサービスとして一部使用していますが宙に浮いた周波数となっているように見えます。
FOMAへのユーザーの移行も進んでおり、PDCは近い将来に全廃になるものと思います。そう考えると、1.5GHzは、早期に使われない周波数となっていくものと推測します。
総合的に見てソフトバンクにしてみると、私はデメリットの方が多いような気がします。まず、1.5GHzという再編の予定されている周波数を使用していること、全国展開をするのが周波数の割り当て上難しいという点は、かなりのデメリットになるものと思います。
ただ、発言力が得られるという点においては、2000億という投資はいいのかもしれませんが…。私は、日経BPの報道にあるように、たぶん、買収というのは、ありえない話で、むしろ、KDDIは、別の会社への売却などを検討しているのではないかと考えるほうが自然かもしれません。或いは、auブランドへの吸収もないとはいえないかもしれません。
[2005/01/19]追記
日経ITProでは、孫社長に直接インタビューしてみたそうだ。

孫社長は「(ツーカー買収の)可能性については何でもありうるが,個別の噂には何も言えない」とコメント。「携帯電話の新規参入については,基本的には自らの力で参入したい」とあくまで独力で携帯電話事業参入を目指すことを強調した。

「基本的には」というところがポイントだな。

投稿者

SAP認定テクニカルコンサルタント(Basis)、AWS認定12冠、情報処理安全確保支援士(SC)、情報処理技術者資(ST/SA/PM/NW/DB/SM/AU/SU/SG/AP/FE/IP)
Swift/Kotlin愛好会、SORACOM UG Tokyo、AWS IoT専門支部の3つのコミュニティ運営、AWS Community Builder の一員としても活動。
フィギュアスケート観戦、クラシックや吹奏楽鑑賞、アイドル、アニメ、声優など興味の対象は幅広いです。

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